David Cross
言わずと知れたKing Crimson唯一のヴァイオリニスト。まぁ、ライブ盤で不幸があったのは事実だけど…。
![]() | Memos from Purgatory('89) | David Crossソロ名義の1st。メンバーはPete McPhail(sax、WIDI)、Sheila Maloney(key、p)、Simon Murrell(b)、Dan Maurer(ds)とほぼRadiusと近い構成。ゆえに気心の知れたメンバーであるのは明白。タイトな演奏である。冒頭の"Poppies"と最後の"Basking in the Blue"のみベースがTim Carterとなっている。前半はハードなエレクトリック・ヴァイオリンを主軸に押せ押せな楽曲が並ぶ。5曲目の"New Dawn"のみCarl Campbell's Dance Company 7のために書下ろし、演奏された曲であるため、多少、毛色の違う曲となっている。ゆったりとした、たゆたう感じが、良い意味でインタールードのような役割を持つ。後半は、同じ流れのようにセンシティブな楽曲や東洋志向を持った、舞踏曲のゆうな"Bizarre Bazaar"と続き終焉を迎える構成。アルバム・タイトルはクレジットにあるように61年に発表されたHarlan Ellisonのノンフィクションの本から。全曲インストながら、非常に歌っているアルバム。 |
![]() | The Big Picture ('92) | 盟友Dan Maurer(ds)、Radiusでも活動を共にするSheila Maloney(key)、John Dillon(b、vo)と組んだバンド形態のアルバム。前作とは打って変わって歌物にシフトしたDavid Cross名義のソロ2作目。10曲中、インストは3曲。内"Minaret"と"Holly and Barbed Wire"にLol Coxhill等と共演経験を持つPete McPhail(sax)が参加。全体的にJohn Dillonの声を活かしたハードでありながら、時にJohn Wettonの声を思い起こさせるキャッチーな喉がマッチがしている曲が多い。"Chiristine"でのヴォーカルパフォーマンスは白眉。David Crossのプレイで特筆すべきは咆哮をあげる"Black Ice"でのパフォーマンスだろうか。インスト"Sundays"はヴィヴァルディを思わせる作風のイントロのフレーズにメロディアスな旋律が乗るムーディーなタイプの曲で、David Cross特有のメロディーが堪能出来るナンバー。全曲、バンド名義の作曲に納得出来るアンサンブルを聴かせる秀逸な出来。 |
![]() | Testing to Destruction ('94) | 前作のバンド・メンバーに新たにPaul Clark(g)を迎えた布陣で録音された作品。今作も作曲は全てバンド名義。ギターが加わったことでハードさが増し、テクニカルな音像を持つ場面が増えたようだ。また、今作のインスト曲である"Welcome to Frisco"、"The Swing Arm Disconnects"、"Cycle Logical"、"Testing to Destruction"は93年10月ベルリンで行われたライブからの音源となっている。ノイズ、即興、反復、といったところがキーワードだろうか。勿論、David Cross Bandが持つメロディアスな部分はここでも健在。これらのライブ音源であるインストと歌物のスタジオ録音との対比が今作の最大の聴き物だろう。歌物では、トライバルで「脈動」を思わせるDan Maurerのドラムに導かれてヴォーカルが乗る、アルバム最後を飾る12分にも及ぶ"Abo"の世界観は素晴らしい。因みにジャケットはJohn Dillonの手によるもの。 |
![]() | Exiles ('97) | ハードエッジなアルバムを立て続けに製作してきたDavid Crossが、十分に時間をかけ、熟考を重ねて出された作品、というイメージを持つ。冒頭を飾るのは表題曲である"Exiles"。King Crimsonのカバー。盟友Dan Maurer(ds)に前作から参加しているPaul Clark(g)に更にPeter Claridge(g)とギターを重ね、Mick Paul(b)にDave Kendal(key)。ヴォーカルは当然John Wettonその人。新しい魅力を纏った逸品。続く"Tonk"ではオープニングから、それと判るギターを響かせるのはRobert Fripp。Peter Hammillのパンキッシュで力強い声と相まって、90年代型King Crimsonさえ思い起こさせる。Pete McPhailのサックスが印象的なスピーディーなインスト・ナンバー"Slippy Slide"の次に今作のハイライトであり、今作の核となる曲が2曲続く。まずはRobert FrippとDavid Crossの2人だけによるサウンドスケープ型インスト曲"Duo"。繊細でありながら、少しずつ確かめるように近づくお互いのサウンドが琴線に触れるように響く。更にDavid Cross作曲、Pete Sinfield作詞による名曲"This is Your Life"。歌詞によるマジックと相まって、John Wettonのヴォーカルも情感豊かで繊細な秀逸な仕上がり。雄大さを持ちながらも肌理の細かい演奏も素晴らしい。続くインスト"Fast"はDavid Crossのソロ作ではお手の物のタイプのハードエッジで緊張感のあるナンバー。Paul ClarkのギターとDavid Crossの掛け合いが素晴らしい。再びPeter Hammillのヴォーカルを擁した"Troppo"ではPeter ClaridgeとRobert Frippがギターを担当。こちらもKing Crimsonを強く意識させるかのようなRobert Frippの咆哮ギターが炸裂する(聴き慣れたテーマも聴こえる)。Pete McPhailのサックスから始まるインスト"Hero"を挟んで、再びRobert FrippとDavid Cross2人による即興曲"Cakes"が始まる。David Crossが自身のキャリアを振り返るが如く旧友を交えてつつも、ここ数年の自身の流れから逸れることなく自身を見つめた結果が傑作へと繋がった作品。因みに次回再発の動きとかがある時は是非にでも、この日本盤オリジナル・アートワークでお願いしたいもの(あれでは幾らなんでも購買意欲が殺がれる)。 |
Radius and related
![]() | Radius "Elevation" ('92) | Geoff Serle(dr.machine、perc.)、David Cross(violin)、Sheila Maloney(key)、Tim Crowther(g)、Simon Murrell(b)という編成のRadiusによる3rdアルバム。Geoff Serleによるドラムパターンを軸に無機質なビートが全編を支配する。そんな中Geoff SerleとSheila Maloneyの作曲の"Days of Forever"の美しい旋律に息を呑む。David CrossとSheila Maloney作の"Ultramarine"は尺八のような音を取入れたRobert Frippのソロにも通じる、ゆったりとした広がりのあるサウンドスケープ・タイプの曲。続く"Sensitized / Desensitize"はTim Crowtherのギターが活躍する躍動感のある曲。Geoff SerleとDavid Cross作の"Pagoda (Jay's Tune)"もDavid Crossのヴァイオリンを効果的に使ったメロディーの美しい、広がりのあるサウンドが特徴。この3曲以外は全てバンド名義の作曲となっている。そして、最後に収められている"Sky Drive"もTim Crowther主導によるエレクトリック・ジャズの権化のような曲。キーボードやギターがまるで管のように泣いている。 |
![]() | Dan Maurer Jim Juhn David Cross Keith Tippett "Low Flying Aircraft" ('87) | Dan Maurer(ds)、Jim Juhn(g、b)、David Cross(violin)、Keith Tippett(p)にRon Linton(tenor sax、bass clarinet)、Eric Drew Feldman(DX7)、Paul Burwell(ds)がゲスト参加したプロジェクト盤。殆どの楽曲はDan MaurerとJim Juhnによるもので、この2人がこの盤の首謀者。煌びやかなオープニングを飾る"Sybilization"に始まり、フリーキーな管が入る"Baptism by Fire"は秀逸。"Reflection"と"What Did You Do"の2曲は4名で書かれた曲。"Reflection"は、冒頭こそ、かっちりと構成されたイントロパートを持つようだが、そこから、即興パートへと向かう。こういった即興性の高いトラックでは、Keith Tippet、David Cross組の主役を喰うほどの尖がり具合が光る。"What Did You Do"の方は、この盤で随一、グルーヴの強い曲。こちらは、Jim JuhnとDan Maurerのしなやかなリズム隊が強烈な魅力を放つ。個人的名盤である。 |
King Crimson
![]() | Larks' Tongues in Aspic ('73) | 70年代、King Crimsonが1stから追求してきたのは、「混沌の内に秘めた美」のようなものを音として顕現させることのように思える。メンバーを一新して再出発を図った、というより、メンバーが集まって出した音がKing Crimsonに相応しかった、という図式だったように記憶している。呼ばれたのは、Family時代にも声をかけられたことがあったとするJohn Wetton(b、vo)を始めBill Bruford(ds)にJamie Muir(perc.)というリズム隊にDavid Cross(violin)。歌詞担当にPete Sinfieldに代わり、John Wettonの旧知の間柄であるRobert Palmer-Jamesが呼ばれる。冒頭から、この編成でのKing Crimsonが目指すところを明確に表した"Larks' Tongues in Aspic, Part One"では、Bill BrufordとJamie Muirの絡み、Robert FrippとDavid Crossのリリカルで時に攻撃的な旋律が聴く者を圧倒する。"Book of Saturday"、"Exiles"と詩的で叙情的なナンバーにおいてでさえ、その緊張感は途切れることがない。さらに"Easy Money"でのソロの応酬は丸でPaul KossoffとAndy FraserのFree組を思い起こさせる。Robert Frippのソロは特に指向性を持たない独自な世界観を持つものが多いと思えるが、この曲にあっては、己の内面と対峙した故に出てくるブルース・ロック特有の真摯な音に聴こえる。この時期のKing Crimsonを聴くと、現在のミクスチャー系と呼ばれるロックの全てのお手本がここにあるような気がしてならない。 |
![]() | Starless and Bible Black ('74) | Jamie Muirが抜け4人編成となった。ヴォーカル曲"The Great Deceiver"、"Lament"の2曲がスタジオで製作されたもので、"We will Let You Know"はグラスゴーでのライブ、"The Night Watch"、"Trio"、"Starless and Bible Black"と"Fracture"はアムステルダム公演(後に"The Night Watch"というライブ盤が製作される)、"The Mincer"がチューリッヒ公演にオーヴァー・ダブを加えたものとなっている。まず、冒頭の"The Great Deceiver"のオープニングで聴けるブラス・ロックのようなノイズの洪水からして驚かされる。ここだけ抜き取ったらKing Crimsonとは思えないかもしれない。正に詐欺師的なトラックか?"The Night Watch"はその名の通りレンブラントの「夜警」だろう。歌詞もそれに即した感じがする。非常にKing Crimsonらしい静の描写が秀逸なナンバー。そして続くインスト"Trio"は文字通りヴァイオリン、ベース、メロトロンによる東洋的なフレーズを盛り込んだ演奏。但し、これは前述のようにライブでの即興で、何も叩かないことを選んだBill Brufordもクレジットされている、という事実が重要だろう。"The Mincer"はRobert Palmer-Jamesのクレジットもあり、ヴォーカルも入っているが途中でぶっつりと途切れるトラックのためか、インスト扱い。そして、表題曲はDylan Thomasの詩作"Under the Milk Wood"(邦題「ミルクの森で」)から取られたフレーズ。静謐さの中に計算されたカオスが聴こえる。そして、名曲の誉れ高い"Fracture"は鬱積されたフィーリングを持続させつつも最後の最後でJohn Wettonの「ヒューッ」に、どれだけのフィーリングが込められているか表されている。いや、真面目に。 |
![]() | Red ('74) | King Crimsonアルバム史上初のメンバーのポートレイトをあしらったジャケット。そのジャケットを見て判るように、メンバーはRobert Fripp(g、mellotron)、John Wetton(b、voice)、Bill Bruford(perc.)となっており、David Crossは先の夏まで行われていたUSツアー後に健康問題を理由に脱退している。このアルバムでは、ゲストとして参加。他にもIan McDonald(sax)、Mel Collins(sax)、Robin Miller(oboe)、Marc Charig(cornet)と言ったKing Crimson本体もしくはその周辺に所縁のあるプレイヤーを迎えている。オープニングのタイトル・トラック"Red"はこの時期のKing Crimsonを象徴するかのような完全無比なインストルメント・ナンバー。その完成された構築美は見事としか言いようがない。"Fallen Angel"はJohn Wettonの声にサックスが寄り添うように吹き流れる。中間部のRobert Frippの叙情的なソロも秀逸。そして、意外とファンキーなリズムを持つ"One More Red Nightmare"は正しく先のUSツアーの暗部を皮肉たっぷりに歌ったものだろう。続く"Providence"はまず間違いなくそのUSツアーからの即興曲の音源。タイトルからしてロード・アイランドでのライブ、ということだろう。この辺りは4枚組ライブ"The Great Deceiver"にも詳しい。最後を飾るのは稀代の名曲の誉れ高い"Starless"。この曲の持つ、冒頭からのヴォーカルパートが持つ美から、中間部での反復から破壊、そして、モダンジャズのようなサウンドを持つ再構築、という一連の流れに、このグループの完結があったのだろうか。この象徴的なハーフシャドーの撮り方や裏ジャケットに現されているレッドゾーンに針が振り切っているメーターを見て、様々な憶測も流れた。King Crimsonは本作をもって一旦その幕を閉じることとなる。 |
Others
![]() | Clearlight "Forever Blowing Bubbles" ('75) | Cyrille Verdeaux(p、mellotron)率いるClearlightの2nd。1stではGong人脈を頼りにアルバムを完成させたが、2ndではフランス人脈をメインにマナースタジオで製作された。現在ではフレンチ・ジャズの大御所Francois Jeanneau(synth、flute、sax)、Bob Boisadan(ele.p、organ、synth)、Jean-Claude d'Agostini(g Emmanuel Boozとの共演等)、Christos Stapinopoulos(ds)、そしてZaoでの活躍が知られるJoel Dugrenot(b)という布陣にKing Crimsonを脱退したばかりのDavid Cross(violin)を筆頭に多数ゲストを迎える。Steve Hillageや自身のソロを持つChristian Boule(g)、Lard FreeのGilbert Artman(perc.)、Bruno Verdeaux(synth)、Brigitte Royが"Narcisse Et Goldmun"でヴォーカルを務める。Celestial ChoirのAmand and Annというのは、Amanda PersonsとAnnette Peacockかな?音楽性はスペーシーなシンフォニックを主体としたもの。ちょっと舌足らずな感じの女性ヴォーカルのイントロから、激しく切り込むギターサウンドを持つJoel Dugrenot作の"Chanson"。アコースティック・サウンドとの対比が秀逸。ヴァイオリンのフレーズがどこか東洋的に響く。更にJoel Durgrenot作の"Way"でもDavid Crossのノイジーなヴァイオリンが活躍。残りのCyrille Verdeaux作品との対比が、このアルバムをより引き締まったものに仕上げているように感じる。 |