No-Man
最近、日本でも飛ぶ鳥落とす勢いがあるSteve Wilson率いるPorcupine Tree。Porcupine Treeの方は、素晴らしいサイトがあるので。私はこのNo-Manというより、No-Manのヴォーカリスト、Tim Bownessに目を向けてみたいと思う。1stの再発が出た時に、みんなに教えてもらったのに、買いそびれている私…(だめじゃんねー、そんなんで、書いていたら)。
![]() | Loveblows & Lovecries a Confession ('93) | Tim Bowness(vo)、Ben Coleman(violin)、Steve Wilson(g、key、programming)を中心としたユニットの2nd。米国デビュー盤でもあるのかな?驚いたのは、何と、レーベルが悪名高きSonyの550Music。後にEcholynでファンの顰蹙を(特に東海岸で)買った。550Musicというサブレーベル自体が東海岸のマインドを持ったレーベルと認知されていただけに(NYCオフィスの番地から名前が取られている)東海岸のファンはがっくりと来たんだけど…。そうか、既にNo-Manが餌食になっていたか…。"Sweetheart Raw"には元Japan組Richard Barbieri(key)、Steve Jansen(programming)、Mick Karn(b)が参加。オープニングの美しいBen ColemanのヴァイオリンとRichard Felixのチェロに導かれてアルバムが始まる構成(この曲のみ作曲がBen Colemanとクレジットされている)となっている。裏ジャケのライナーに書かれているように、キーワードとして「ドリーム・ポップ、アート・ロック、ムーディー・ミニマリズム」というのは正解だろう。米盤には"Days in the Trees: Mahler"と"Taking It like a Man"が足されている。 |
![]() | Flowermouth ('94) | エレクトロ・ポップとかアンビエント・ポップとか呼ばれる事の多いNo-Man。確かにそういった音。ただ、どこか人肌程度の温かみを感じるのはTim Bownessの声か、Steve Wilsonの音作りか?それともゲスト陣による賜物か?まずはその多くのゲスト陣に目を剥く。冒頭の"Angel Gets Caught in the Beauty Trap"でNucleusのIan Carr(trumpet)、現在は21st Century Schizoid Bandにいるセッションの達人Mel Collins(sax)、元No-ManメンバーのBen Coleman(violin)、King Crimson総帥Robert Fripp(g)、Porcupine Treeでも仕事をすることになるChris Maitland(ds)、Colorsonic3で活躍するSilas Maitland(b)が参加。中盤のソロ回しで静謐なno-manサウンドにノイズを入れる「相変わらずな困ったオヤジ達」である。Robert Frippは全9曲中6曲で参加、と信頼の厚さが窺える。その他にもRichard BarbieriとSteve JansenといったJapan組の参加もある。サンプルとして使っただけのようだが、Dead Can DanceのLisa Gerrardの参加は個人的には特筆すべき出来事だった。 |
![]() | Heaven Taste ('95) | 最初にジャケットを見たとき、子供が孫の手を持っているのかと思った…(いや、本当に)。収録曲を見ると91年収録のNick Drakeのカバー"Road"(72年の最後の作品"Pink Moon"収録)、92年の"Long Day Fall"、"Bleed"、表題曲の大作"Heaven Taste"、そして93年の"Babyship Blue"とあることから、何かしらのコンピレーション盤である事が伺える。興味深いのは、5曲の内、最も時期が近い2曲"Bleed"と"Babyship Blue"にリミックスを施していて、その他はそのまま残してある点。初期音源をそのままにしておきたかった、という意図もあったかもしれないし、大作"Heaven Taste"などにはJapan組のRichard Barbieri(key)、Steve Jansen(perc.)、Mick Karn(b)が関わっている、というような他のミュージシャンの参加というのもあったかもしれない。カバーの"Road"は、ヴォーカリストであれば、誰しもNick Drakeには一回は触れるだろう。特にTim Bownessのような歌い方は明らかに影響を受けているので、このカバーは特に大切でしょう。 |
![]() | Flowermix ('95) | タイトルを見れば、"Flowermouth"のリミックス・アルバムであるのは明白。リミックスという物が、どの程度の変化をもたらしてくれるのか?個人的には80年代、所謂、MTV時代、12インチ・シングルによく収められていたエクステンディット・ヴァージョンだとか、○×ミックスだとか、単に曲をストレッチさせたかのような、間延びしただけの曲、というイメージが強い。そのため、リミックス物、というのには警戒心が非常に強い。但し、その後、リミックス、というエンジニアリングによる武器が新しい手法として提示されているのも横目で眺めつつ、であった。結論から言えば、料理と同じなんだな、と。一歩間違えると、いくら素材が良くても台無しにもするし、さらに引き立てることも可能だろう。で、この"Flowermix"。とりあえずは、作品として新しいものを提示することは無くとも、こういう聞かせ方もあるんだよ、というのは伝わる。"Flowermouth"を楽しめた人なら絶対に楽しめる作品に仕上がっている。Steven Wilsonが"Angeldust"、"Heal the Madness"、"You Grow More Beautiful (version)"、"Born Simple"の4曲、The Prophets of Blissが"Faith in You"、Faultlineとも呼ばれているDJ David Kostenが"Why the Noise?"とTim Bownessとの共同作業で"Natural Neck"、そしてLove X & YのキーボーディストOs(Andrew Ostler)が"All I See"(元々は"Soft Shou"と呼ばれていたが…捻りも何もあったもんじゃなかったのだろう…)と"Sample"(後にOsのカセット作品"White"にも収録)の作業を担当。 |
![]() | Housewives Hooked on Heroin ('96) | いきなり、このタイトルでは、そりゃあ、驚くっての5曲入りのEP。"Wild Opera"からの先行のようだ。今までもよりも、更にプログラミングなどの打ち込みが占める音空間が増しているようだ。ただ、それを微塵も感じさせない重さがタイトルトラックにはある。"Hit the Ceiling"もタイトル通り(?)の重さがある。"Housewives Hooked on Methadone"は、タイトル曲のリミックス版かな?シャカシャカと軽いドラムンベース音が入っている6分ほどストレッチされた作品。続く"Urban Disco"もタイトル通りの雰囲気のある踊れる曲。常連になりつつあるIan Carr(trumpet)とRobert Fripp(soundscape)が"Where I'm Calling From"に参加。ジャケットは秀逸。当分、この路線が続く。 |
![]() | Wild Opera ('96) | Mel Collinsのフリーキーなサックスが吹き荒れる"Radiant City"から幕を開ける。"Radiant City"と"Pretty Genius"のヴォイオリンはNatalie Boxにスウィッチされている。Mel Collinsはサンプルでフルート等の他の管の音を提供しているようだ。同様にRobert FrippとRichard Barbieriがサンプルを提供。"Housewives Hooked on Heroin"で提示されていたように、今作でも全体的に打ち込み度合いが高く、ダンスビートを基調としながらも、どのように重いサウンドを提示するか、が今作の肝だろう。トータルアルバム、という訳ではないだろうが、サウンド、ジャケット、詞世界に一貫性があるようだ。言うなれば、ベッドタウンの狂気?みたいな感じ。下手をするとペーソスな世界(それも良いんだけど)。そういった題材の中にある多彩で緊張感のあるサウンドはある種のギャップを生み出し特異なものとしているように感じる。No-Manの特色はサウンドによるギミックだけでなく、"Libertine Libretto"に見られるような「ズレ」や"Sheeploop"などの奏法による、センスなんだな、と再認識。 |
![]() | Dry Cleaning Ray ('97) | "Wild Opera"からカットされた"Dry Cleaning Ray"を頭に持ってきたミニアルバム。歌詞を読むと表題曲を始め、非常に英国的なスローな日常を描いている曲が多いように思える。陰鬱さはあっても、Porcupine Treeのような非日常はここにはない。あくまでも地に足がついていて、それがペーソス感を生む。ある意味、非常に映像的でもあり、在り来たりな風景のような気がする。それだけに、これと同じ日常を持つ者がこれを突きつけられたら、どう反応するのだろうか?サウンドに重みが増す。強烈だ。"Urban Disco"は"Housewives Hooked on Heroin"で既出。"Diet Mothers"は"Pretty Genius"を再構築したもの。"Punished for being Born"は"Housewives Hooked on Heroin"をMuslimgauzeことBryn Jonesがミックスを担当。名前通り、中東っぽい要素が加味されている。"Evelyn (the Song of Slurs)"はSerge Gainsbourgの曲(映画「Slogan」より)。 |
![]() | Carolina Skeletons ('98) | 4曲入りEP。とは言え、ただ曲を並べただけ、というのとは訳が違うようだ。Tim Bownessの声とSteven Wilsonのインストルメンツという最小限のクレジット。唯一Rick Edwardsが"Close Your Eyes"でパーカッションのクレジットがされている(きっと、冒頭からのプリミティブな音がそうかな?)。ある意味No-Manとしてのユニットを見直す作業を行っているようにも聞こえる。そして、4曲目に"Carolina Reprise"と戻ってくる構成は、本CDがある種の構成を持って製作されていることを位置付けている。問題はタイトルか…。元々David Stoutの本(「カロライナの殺人者」という題で翻訳もされているようです)で91年にTVドラマ化され、そして映画にもなった事実を元に作られた物語。ジャケットや歌詞との明白な連動性があるのかどうかは知りませんが、本は読みたくはなるかな…。 |
![]() | Speak ('99) | "Carolina Skeletons"からの次のアルバムは驚いたことに88年から89年の間に製作されたマテリアルに手を加えた作品となった。ヴォーカルは全て差し替えられ、楽曲の殆どはオリジナルの8トラック・テープから持ってきたもの、とクレジットがある。但し、"Curatin Dream"と"Night Sky、Sweet Earth"のインストパートは全て差し替えている、とのこと。ある意味、新しい1stアルバム?という位置づけも可能。まずは、Ben Colemanとの共作曲にして表題曲の"Speak"が始まる。どこまでも深く地の奥から生を感じさせる女性ヴォーカルはLisa Gerrardを思わせるがクレジットがないので不明。同様に、こちらもBen Colemanとの共作曲である"French Tree Terror Suspect"も同じ種の感慨を聞くものに与える。続いて、きっとTim Bownessのお気に入りなんでしょう、のNick Drakeのカバー"Pink Moon"("Pink Moon"に収録)。Steven Wilsonのギターの音も寄り添うように鳴っていて良い。更にDonovanの"River Song"("Hardy Gurdy Man"収録)のカバーも披露。Tim Bownessのテイストがよく分かる。クレジットされているのは、いつものTim BownessとSteven Wilsonの他に元同僚のBen ColemanとRichard Felix(harmonica、cello)のみだが、前述したようにオープニングの女性ヴォーカルや最後の"Death and Dodgson's Dreamchild"のサックス等のクレジットがなく、不明の多いアルバム。04年の再発時に11分にも及ぶ"The Hidden Art of Man Ray"が足された模様…(全然知らなかった)。私のはMateriali Sonori盤なんで。やっぱり買い替え必須か? |
![]() | Returning Jesus ('01) | "Carolina Skelton"を含むフルアルバム。まず、冒頭の"Only Rain"は"Flowermix"にも参加したDJ David Kostenが作曲、プロデュースに関わった作品。Porcupine Treeでも一緒に活動しているColin Edwin(b)がSteve Jansen(ds)とリズム隊を組んで全面参加。このリズム隊によって、このアルバムはある意味、特色付けられていると言っても過言ではない。このリズム隊の参加によりバックの演奏の温度のグッと上がり、今までTim Bowness一人で人肌程度の温度を保っていたのが、このアルバムでは、更に上昇。Steven Wilsonのキーボード類のチョイスや使い方もループ等の使い方よりもオルガンサウンドを多用したり、ヴィンテージ・サウンドを押し出したりと明らかに違いが出てきている。もしかしたら、これもPorcupine Treeの"Lightbulb Sun"効果かもしれない、と発売時に思ったのを思い出した。ゲストは今回も多彩で冒頭でのトランペットはお馴染みのIan Carr、続く"No Defence"、"Close Your Eyes"と"Slow It All Down"で管を入れるIan Dixon(trumpet、flugelhorn)、更にTheo Travis(sax、flute)が"Slow It All Down"と"Lighthouse"で参加。DJ David Kostenが連れてきたと思われるBen Christophers(acc.g)が"Only Rain"と"Slow It All Down"で参加。こういったゲスト陣の選択もこのアルバムの温度を上げるのに非常に重要な役割を負っている。特にジャジーなサウンドを提供しているパートは聞き逃せないだろう。重要なアルバムだと思う。 |
![]() | All That You Are ('03) | 表題曲を中心に"Returning Jesus"セッションから漏れた4曲を足して出されたミニアルバム。最終的には"Returning Jesus"には収録されなかったが、このアルバムがどれだけ意欲的な作品だったかは、このミニアルバムを聞けばよく判る。バンジョー(!)をバックにエモーショナルな声を載せる"Until Tomorrow"。続く"Chelsea Cap"ではColin Edwin(b)、Steve Jansen(ds)、Theo Travis(flute)が参加したトラック。Voを重ねているのはTim Bowness本人でしょうかね?非常に明るいコーラスにしてある。Theo Travisのfluteが尺八のように聞こえる。そして、ある意味、非常にNo-Manらしい静謐でダークな"Darkroom"。そして最後に再び"Until Tomorrow"が収められているが、多分こちらが最終的なプロダクションにより近い形のものだと思われる。バンジョーとTim Bownessの声は丸で古びたラジオから流れているかのようなサウンドに仕上げられている。 |
![]() | Together We're Stronger ('03) | 今回は、Ben Castle(clarinet、bass clarinet、flute)、David Picking(trumpet、electronics、percussion)、Stephen Bennett(noise、organ、cymbal)、Peter Chives(b)などのお馴染みの顔ぶれが並ぶ。Michael Bearpark(g)が表題曲で無機質な静謐な音を奏でるソロを提供。Roger Eno(harmonium)が"Photgraphs in Black and White"に参加。全体的に何層にも丁寧に重ねられた痕跡を持つサウンド・レイヤーにセンシティブなTim Bownessの声が乗る。それに呼応するかのように優しく包み込むように鳴る管の響きが心を潤わせる。特に"The City in a Hundred Ways"のオープニングに鳴るクラリネットの音が素晴らしい。"Back when You were Beautiful"のバンジョーの音もどこまでも欧州的でNo-Manのサウンドに対する姿勢が見える。過去への憧憬を感じさせる2曲の後が"The Break-Up for Real"。美しいコーラス・パートを持ちながら、ノイジーなギター。静かなる破壊。この静における表現力の強さと豊かさが一貫してno-manが追求しているサウンドだと言えるだろう。そして、このアルバムはその一端でしかない。 |
![]() | Schoolyard Ghosts ('08) | ある意味5年というブランクを全く感じさせない、変わりようのないNo-Manの作風に敬意を表したい。多くのゲストを迎えながらも、ジャケットに現されているようにモノトーンに統一されたNo-Manらしい世界観。但し、そのモノトーンはまるでリスナーを拒絶するかのような壁を感じる。歌詞にはsweet、beautifulといった感情を表す言葉が多用されていたり、Pat Mastelottoの激しいドラミング(Pigeon Drummerって洒落が効いている)やBruce Kaphanの伸びのあるpedal steel、Colin Edwinの膨らみのあるアコースティック・ベース、美しいTheo Travisの管、Marianne de Chastelaineのチェロといったものがサウンドに彩りを加えれば加えるほど、Steven Wilsonのサウンドは凍てつき、Tim Bownessの言葉が無機質に響く。時にTim Bownessの声はその歌詞の選択からMarillionのSteve Hogarthの声を思い起こさせる部分もあるけど、それが却って、ある意味No-ManのTim Bownessらしさを浮き彫りにもさせている。最後の最後に出てくる"Mixtaped"のオルゴールの音はなんて示唆的なのだろう。圧巻は12分に及ぶ"Truenorth"だろうか(特にTheo Travisのフルートは絶品)。オーケストレーションはDave Stewartが担当。アルバムタイトルは冒頭の"All Sweet Things"の1節から。本作はDVD-Aとの2枚組。私はシステムを持っていないけど、どんな音のこぼれ方をするのか凄い興味があります。因みにBurning Shedからの購入者は先着で更にオルタネート・ヴァージョン6曲入りのボーナスディスクが付いた。 |
![]() | Various Artists "The Sky Goes All the Way Home" ('99) | 英国在住のダウン症の女の子Claire Franklinが口にした言葉"the sky goes all the way home"。この言葉が全ての始まりとなった2枚組チャリティーアルバム。参加アーティストには、彼女が言ったこの言葉のテープを渡されて自由に使用して良いとされた。そのテープを使用する参加者もいれば、使わなかったアーティストもいた。No-Manの"Like a Child"は、冒頭に彼女の肉声のテープをサンプルにして、アフリカンっぽいリズムを持たせたループに、Theo Travisの優しいフルートとTim Bownessの声が被さる、という構成。いかにもNo-Manらしさの出ている温かみのあるトラック。また、Theo TravisはCipherとしても参加(こちらでは肉声のテープを使用しておらず)。その他にもシンフォニックな佳曲を提供するRick Wakeman、らしさ満点のIonaのTroy Donockley、アコースティックギターの音色が美しいGordon Giltrapは自身の曲だけでなくジャケットを手掛けたSue Martinのトラックにも参加。Peter Hammill、Kevin Coyne、Anthony Phillips、The Enid(というかRobert John Godfrey)、Celtus(元Mama's BoysのMcManus兄弟のバンド)、Roy Harper、John Wetton、Robert Fripp等が参加。実は、既にこの2枚組を発表する時点で更に多くのマテリアルが届いており、第2、第3弾が待たれている…(どうなったんだろう?) |
Tim Bowness Other Works
![]() | Darkroom "Daylight" ('98) | Michael Bearpark(g)とOSことAndrew Ostler(key)によるユニット。Tim Bownessはほぼ全編に渡って、Voなりサンプリングされた声なりがあちこちで鳴っているのが聴こえる。"Sprawl"ではPeter Chiversの名前がSubliminal Space Bassとしてクレジットされている。ドラムンベースを基に、凍えるようなサウンドスケープが舞う様は、寒々しい荒涼とした風景を映し出す。零下のヒップホップ。そんな趣にも聴こえる。"Carpetworld"と"Daylight"は先行シングル"Carpetworld"にも収められていた。注目は最後の2曲である"Vladimir"と"Estragon"。そのタイトルからして、明らかにSamuel Beckettの"Waiting for Godot"からインスパイアされた曲だろう。その戯曲の中に登場するキャラクターからソビエトとフランスを象徴する名前をピックアップしたのは興味深い(一応、この作品が録音されたのは英国と仏国)。プロデュースはOS。 |
![]() | Tim Bowness / Samuel Smiles "World of Brigth Futures" ('99) | Mike Bearpark(g)、Peter Chilvers(p、b)、Myke Clifford(sax)のSamuel SmilesとTim Bownessの共同アルバム。スタジオ盤とライブ盤(5曲入り)の2枚組。Tim Bownessの声を前面に押し出し、添うように響くMyke Cliffordのサックスのブローが印象的。No-Manの"Flowermouth"に収録されていた"(Watching) Over Me"を再び収録。Steven Wilson(g)の他、ウドゥのような音を出すRick Edwards(perc.)、コントラバスを弾くColin Edwinが参加。続くTim Bowness作の"Sorry Looking Soldier"ではTim Bownessが繊細なアコースティックギターを奏でる中、終盤にこれまた更に線の細いギターをMike Baerparkが挿入させる。そして、既にお約束に近い感のあるKing Crimsonカバーは"Two Hands"(Beatより)。渋い…。さらに"Lisa/Ophelia"と題されたものはInstrumental;Bearpark, Song; HammillとあるようにPeter Hammillのアルバム"Sitting Target"に収められていたアコースティック曲"Ophelia"をエレクトロニックにした感じ。やはり、このあたりは共通の世界観を有している、のかもしれない。スタジオ盤は全10曲。ライブ盤は96年の4月ロンドン公演から2曲、93年ケンブリッジ公演から3曲、Tim Bowness、Mike Bearpark、Peter ChiversにMarianne de Chaslelaine(cello)という編成。 |
![]() | Henry Fool "Henry Fool" ('01) | Tim Bowness(g、vo)、Fudge Smith(ds 元Pendragon)、Stephen Bennett(key LaHost、The Fire Thieves等)、Peter Chilvers(b、g Alias Grace等)、Mike Bearpark(g Darkroom等)、Myke Clifford(woodwind Backyard Band等)による、プログレシッブ・ロック・バンド。プロデュースがStephen BenettとTim Bownessで、楽曲を手掛けているのも、この2人が中心となっているので、このプロジェクトの首謀者と見て良いだろう。5つの曲からなる"Late Show"なる組曲を含む全16曲。アルバムのイントロ的性格を持つ"Friday Brown"からStephen Benettの重厚なオルガンサウンドが炸裂する"Bass Pig"、そしてフェンダーロ−ズにリズムの妙技を堪能させる、ジャズロックの王道のような"Poppy Q"から組曲"Late Show"に突入。始めは静謐な世界観を持つ音にTim Bownessの温かみのある声が乗り、真ん中"Poppy Z"で激しくもクールな部分を失わないアヴァンギャルドな管を乗せ、再び元の鞘に収まるように収束していく。この頭からの流れは出来過ぎなほど秀逸。ジャケットはMyke CliffordとStephen Benettの手によるもの。ここでもSteven Wilsonが"Poppy Q"と"Heartattack"でミックスを担当。もしも次作があるとするならば…やっぱり"Fay Grim"になるのか?というか、次作、出来たら本当にお願いしたい…。No-Man、Porcupine Treeファンあたりは絶対に聞き逃してはいけない好盤。 |
![]() | Tim Bowness / Peter Chilvers "California, Norfolk" ('02) | Tim BownessとPeter Chilversの文字通りデュオ形式のアルバム。Tim Bownessは"Post Its"と"Rocks on the Green"でギター、ゲスト参加のJon Hartがヴィブラとマリンバで"Also Out of Air"と"Rocks on the Green"に関わっている以外は全てPeter Chilversの手によるサウンド。楽曲は"Chant One"と"Also Out of Air"のみTim Bowness一人によるもので、残りは全て二人による共作。全体を通して、Tim Bownessらしい言葉を大切に紡ぐ静謐な世界観は健在。但し、冒頭からどのアルバムよりも温かみを感じさせるのは、Peter Chilversのサウンドによるものか、二人の共作の結果だろうか? |
![]() | Tim Bowness "My Hotel Year" ('04) | RhinocerosのDavid Pickingをプロデューサーに迎えてのソロ名義としては最初の作品。当然ながら、No-Manとは一線を画した作品となった。バックの音は鳴ってはいても、ヴォーカルを邪魔することは一切許されず、兎に角、「声」に全ての焦点を当てた作品。静謐であり、繊細である。ここまで、声を大切にしたアルバムも珍しいような気がする。そのバックを務めるのは、David Picking(ds、g、p、key)、Stephen Bennett(g、key、flute)、Markus Reuter(b、g)、Peter Chivers(p、key)、Dan Peel(g)、Roger Eno(harmonium)、Mike Bearpark(g)、Brian Hulse(acc.g)、Hugh Hopper(g、b)、Frank Van Der Kooy(sax)等、近しい人たちの名前が多く見られる。これも、人柄であろうか?そういう声に聞こえる。 |
![]() | Centrozoon "Never Trust the Way You Are" ('04) | Markus Reuter(touch guitar、b、electronics Europa String Choir等に参加)、Bernhard Wostheinrich(synth、electronics)によるユニットCentrozoonにTim Bownessが全面参加。所謂ダウナー系とでも言うのだろうか。鬱屈したビートにTim Bownessの声が被さる。歌詞も全てTim Bownessによるもの。"Bigger Space"と"Pop Killer"にPat Mastelotto(ds King Crimson等)が参加。全編に渡って顔を出すMarkus Reuterのサウンド・スケープは流石にKing Crimson一派な音。デジタルなビート、サウンド・スケープ、ループといったモダンなプロダクションでも、その音は意外に(失礼!)表情豊か。"Carpet Demon"など、ある種コミカルなサウンドで歌詞もちょっとストレンジなもの。"Little Boy Smile"や"The Scent of Crash and Burn"の緊張感、そしてアルバム最後を締め括る"To the Other"の静謐なサウンド。ある意味Tim Bowness(の声と歌詞)がいたからこそのサウンド。 |
and Some More...(イタリア紀行特集になりそうな予感)
![]() | Saro Cosentino "Ones and Zeros" ('97) | イタリアのマルチミュージシャンSaro Cosentinoのソロアルバム。ディスコグラフィーを見ると4枚目のようだ…。歌物が6曲(全てゲストヴォーカリストを迎えて製作されており、歌詞は各々、担当ヴォーカリストによる。)、作曲は全てSaro Cosentino。最後のデュオ・インスト"9:47-PM Eastern Time"のみ元King CrimsonのTrey Gunnとの共作。Tim Bownessは3曲目"Days of Flaming Youth"の歌詞とヴォーカルを担当。No-Manのアルバムに入っていてもおかしくない程、近い音像を持つ曲。広がりのあるフレットレスベースの音が気持ち良い。ヴォーカルの録音がno-man's landとなれば、エンジニアを務めるのは、当然Steven Wilson氏だ。全体的にPandit Dinesh(perc.)やKudsi Erguner(ney flute)、Shankar(violin)といったその筋では有名なミュージシャンを起用しているところから、隠し味程度だが、東洋嗜好が入っているのが特色。Tim Bowness以外のヴォーカリストは紅一点Karen Edenがオープニング"Bite the Bullet"と"Behind the Glass"を担当。御大Peter Hammillのどこまでも優しい声が心を震わせる"Phosphorescence"。そして"From Far Away"を。そしてJakko Jakszykが"Defying Gravity"をギターと共に担当。更にGavin Harrison(ds)、John Giblin(b、Brand X等に参加)、David Rhodes(g、Peter Gabriel Band等)等が参加しているのも見逃せないでしょう。秀逸な作品です。 |
![]() | SPLaTTeRCeLL "ReMiKSiS ::: AH" ('00) | SPLaTTeRCeLL=NYのギター魔人ことDavid Tornその人。SPLaTTeRCeLLはサンプルを多用したDavid Tornのソロプロジェクト。多くのミキサー系ミュージシャンを使い、更にいぢくり倒す、という感じのプロジェクト。今作と対になっているのが"OAH"だろう。特にその中で使われていた"Is Love"をリミックスの原型に使い、発展させた楽曲が幾つか本作に収められている。日本勢では仲の良い坂本龍一やDan the Automator Nakamura、Yoshihiro Hanno(半野喜弘?)やNine Inch NailのCharlie Clouser等の名前と一緒にTim Bownessの名前も"Romance Refined"でSPLaTTeRCeLLとの共同名義でクレジットされている。7分にも及ぶトラックでは、Tim Bownessの声が被さった時点で、完全にTim Bownessの世界観を演出しきってしまうのは流石。途中、中国語の台詞が微かに聞こえたりもするトラックとなっている。こういう手法ってのは、音楽では比較的新しいのかもしれないけど、極めてウォーホール的って事なんでしょうね、きっと。 |
![]() | Alice "Viaggio in Italia" ('02) | Tim Bowness、イタリア紀行第2弾は、イタリアの歌姫Alice(アリーチェ)のアルバム参加。タイトルは"Travel in Italia"。その名の通り、イタリアを代表するシンガー達の曲のカバー集である。Franco Battiatoの"Come un Sigillo"(元々、Franco BattiatoのアルバムでAliceとデュエットをしていたらしいですが、今作ではPaolo Fresuとの共演)に始まりFabrizio De Andreの"Un Blasfemo"、Lucio Battistiの"Cosa succedera alla ragazza"、"Ecco i negozi"等が並ぶ中、異色曲が2曲ある。その2曲がTim Bownessとのデュエット曲、King Crimsonの"Islands"とSyd Barrettの"Golden Hair"("Park Hotel"あたりから、彼女の活動の仕方を見たら、結構プログレ、とりわけ、クリムゾン・ラブなのは判るけど…それにしても、凄い選曲だ…)。"Islands"の方はTim Bownessの歌い出しから始まり、Aliceが重ねいくのに対し、"Golden Hair"はAliceの歌いだしから、Tim Bownessが重ねていく、という対比を持たせている。これらのデュエットで聞かせるTim Bownessの声は、ちょっと今まで聞かせてきたTim Bownessの声と違い、艶、色気、というものが非常に強い。no-manで、ここまで強い色気を出したことはないんじゃないかな?イタリア、という地なのか、それともAliceとの相乗効果なのか。Tim Bownessファンには必ず聞いてみて欲しい作品かもしれない。両曲とも、シンセやコンピュータープログラムが土台で音を構築しているが、静謐さを上手く醸し出した秀逸な出来となっている。ちなみにJakko Jakszykもギターで参加。Pier Paolo Pasolini(え?映画監督の?)の詞にGiacomo Di Martino(え?I Gigantiのギターさんでしょうか???)の作曲の"Al Principe"とFrancesco De Gregoriの"Atlantide"に参加している。 |
![]() | Rhinoceros "Tiny Ghosts" ('03) | David Pickingのソロ・プロジェクトRinoceros。プロデュースから演奏まで何から何まで全て一人で行っているマルチ・ミュージシャン。ベース、ドラム、ギター、ピアノ、トランペットとその幅は広い。Tim Bownessが参加した"World of Afraid"は後にTim Bownessのソロ・アルバム"My Hotel Year"にも収められる。この曲ではStephen Benettがシンセサイザー奏者として参加。またDJ Logが最後のトラック"Lost Rabbit"に参加。皿を回している。浮遊感漂う音が支配的ながら、どこか力強さを感じるアルバム。 |
![]() | Nosound "Lightdark" ('08) | Giancarlo Erra(vo、g、key)率いるnosoundの2nd。メンバーはPaolo Martellacci(key、vo)、Gabriele Savini(acc.g)、Alessandro Luci(b)、Gigi Zito(ds、vo)からなる。ゲストにMarianne De Chastelaine(cello)が3曲で参加。Tim Bownessが"Someone Starts to Fade Away"でヴォーカルを担当。全体的にNo-Manのサウンドを思い切りドライに乾かしたようなサウンド。"The Misplay"で聴けるピアノの高音のサウンドがつんざくように耳に突き刺さる場面などが特徴か。また"From Silence to Noise"の中盤の高揚感あるギターソロは結構オールドスクールなハードロック・タイプのものだったのが意外。Tim BownessのヴォーカルはくぐもったGiancarlo Erraのヴォーカルと比べるとはっきりとした発音が意志の強さを表しているように聴こえる。静の場面で使われるメロトロンのサウンド(サンプル?)とドラムの重なり方が初期King Crimson等を思い起こさせる。Celesteか? |